今帰仁ミャークニー ⑵
なちじん みゃーくにー
nachijiN myaakunii
◯今帰仁のミャークニー(宮古の音)
語句・なちじん 現在の沖縄県国頭郡今帰仁村を指す。琉球王朝時代の17世紀の頃、今帰仁間切はほぼ本部半島全域だったが18世紀の初めに本部間切と今帰仁間切に分離された。
参考;「今帰仁ミャークニー歌詞選集」(作成・記録 平成二十五年五月 平良哲男)より。
だんじゅとゆまりる 仲宗根の島や黄金森くさてぃ 田ぶく前なち
だんじゅとぅゆまりる なはじゅにぬしまや くがにむいくさてぃ たーぶっくめーなち
daNju tuyumariru nahajuni nu shima ya kugani mui kusati taabukku meenachi
◯いかにも世間に有名な仲宗根という村は美しい森を背に 田んぼを前にしている
語句・だんじゅ「なるほど。いかにも。げにこそ。」【沖縄語辞典(国立国語研究所編)】(以下【沖辞】と略す)。・とぅゆまりる「世間に鳴り響く。評判になる」【沖辞】。<とぅゆまりゆん。とぅゆまりいん。・なはじゅに仲宗根(今帰仁の地名。現在は字。) 「なかずに」と首里では呼ぶが、今帰仁地方では「k」が「h」に変わる。・くがにむいくさてぃたーぶくめーなち 村を褒める美辞。「くがに」は金を表すが「むい」(丘。山。「森」に対応する。)を褒める美辞。「たーぶっく」は「田んぼ」を意味し「たーぶっくゎ」ともいう。
仲宗根の東 水車建てて 潮ぬぬちゃがりば とりてぃ立ちゅさ
なはじゅにぬあがり みじぐるまたてぃてぃ うすぬぬちゃがりば とぅりてぃいちゅさ
nahajuni nu 'agari mijiguruma tatiti 'usu nu nuchagariba turiti 'ichusa
◯仲宗根の東に水車を作り、潮が満ちてくると 回るのを止めて立っている
語句・ぬちゃがりば 上がってくる。<ぬちゃがゆん。ぬちゃがいん。「抜けてあがる。抜けて上に出る」【沖辞】。・とぅりてぃ <とぅりゆん。とぅりいん。「凪ぐ。風がやむ」【沖辞】。ここでは水車が回るのを止める、だろう。
越地川ぬ水や 砂かみて湧ちゅさ 越地美童ぬくんだ美らさ
ふぃじがーぬみじや しなかみてぃわちゅさ ふいじみやらびぬ くんだちゅらさ
hwijigaa nu miji ya shina kamiti wachusa hwijimiyarabi nu kuNda churasa
◯越地の井戸の水は砂の下から湧くよ。越地村の娘のふくらはぎの美しさよ!
語句・ふぃじがー 今帰仁の字。「がー」は「かー」(井戸。泉。)・くんだ ふくらはぎ。
島やまが童 今帰仁ぬ天底 美らく生まりたる花ぬわらび
しまやまーがわらび なちじんぬあみすく ちゅらくんまりたるはなぬわらび
shima ya maa ga warabi nachijiN nu 'amisuku churaku 'Nmaritaru hana nu warabi
◯出身の村はどこだ?子どもよ。今帰仁の天底。美しく生まれた花のような子ども
語句・しま 「しま」には「㊀村落。部落」「㊁故郷。出身の部落。」【沖辞】などがある。ここでは㊁であろう。・あみすく 今帰仁の字。
運天ぬ嫁や ないぶさやあしが あだん葉ぬたむん 取いぬくちさ
うんてぃんぬゆみや ないぶさやあしが あだんばーぬたむん とぅいぬくちさ
'uNtiN nu yumi ya naibusa ya 'ashiga 'adaNbaa nu tamuN tui nu kuchisa
◯運天の家の嫁にはなりたいが アダン葉の薪は取るのが苦しいことよ!(だから遠慮したい)
語句・うんてぃん今帰仁の東部の字。・ないぶさ なりたい。・あだんばー 海岸に生えているタコノキ科の常緑樹。葉にはトゲがあり、採集が難しい。薪に利用する他、筵や笠、帽子などの原料となる。・たむん 「たきもの。たきぎ。まき。」【沖辞】。・くちさ 難しい。<くちさん。辛い。
今帰仁ミャークニーの歌詞を平良哲男さんのまとめられた「歌詞選集」から。
今帰仁の間切にあった村は、今帰仁村の字となり、合併したりして消えた村もある。
その村の情景を謡うとともに自然と人への讃歌でもある。
と同時に歌う人の個人的な思い出や心情をのせる叙情性もある。
たまたま昨日(2016/4/7)今帰仁村教育委員会の方から、今帰仁ミャークニー大会のパンフレットや資料を送っていただいた。
全てPDFなので、このブログで紹介することも可能である。
研究論文などもあるので非常に貴重な資料でもある。
随時紹介していきたい。
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