ちかひな口説
ちかひなくどぅち
chikahina kuduchi
〇束辺名(按司の名)の口説
語句・ちかひな 現在は糸満市の中の喜屋武村にあった「束辺名」(つかへな)。現在は「束里」(つかざと)と呼ばれるところに居た按司の名前。組踊りに「束辺名夜討」がある。
歌 嘉手苅林昌
たとぅい年取てぃ七、八十なてぃん主人ぬ敵仇 許ちいたじら死なりゆみ
たとぅいとぅしとぅてぃしちはちじゅーなてぃんすじんぬてぃちかたち ゆるしいたらじらしなりゆみ
tatui tushituti shichi hachijuu natiN sujiN nu tichikatachi yurushi 'itaraji shinariyumi
〇たとえ歳を取って七、八十になっても主人の敵仇を許し無駄に死なれようか
語句・いたじら 無駄に。徒(いたずら)に。「いたずら」ではない。
一人命ぬある限り いさみいさみとぅちかひなが 首ゆ討ち取てぃ祭らんとぅ
ふぃちゅいぬちぬあるかじり いさみいさみとぅちかひなが くびゆうちとぅてぃまちらんとぅ
hwichui nuchi nu 'aru kajiri 'isami 'isami tu chikahina ga kubi yu 'uchituti machiraNtu
〇一人の命がある限り いさめよいさめよと束辺名の首を討ち取って(主人に)奉りたいと
語句・いさみいさみとぅ 「勇み」と「諌み」の両方の意味に取れるが、ここでは「諌める」(いさめる)、主人への報復として「いさめよ」(あやまちを正す)。
思い果たす心ゆば 神ん仏ん知りみそち 引ちゆ合わしてぃたぼりてい
うむいはたすぬくくるゆば かみんふとぅきんしりみそち ふぃちゆあわしてぃたぼりてい
'umi hatasu nu kukuru yu ba kamiN hutukiN shirimisochi hwichi yu 'awashiti taboriteei
〇思い果たすという心をこそ 神も仏もお知りください どうぞ仇に引き合わせてくださいと
語句・ゆば ゆ 目的格の「を」にあたる文語。+ば。強調。・てい といって。
いざやいざやとぅ立ち出じてぃ あゆみあゆみとぅ真玉橋 しばし御城にうちかんてぃ
いざやいざやとうたちんじてぃ あゆみあゆみとぅまだんばし しばしうしるにうちんかてぃ
'iza ya 'iza ya tu tachi 'Njitu 'ayumi 'ayumi tu madaNbashi shibashi 'usiru ni 'uchikaNti
〇いざ!いざ!と出て行って 歩け歩けと真玉橋 すこし御城に向かって
語句・まだんばし 現在の豊見城市にある国場川にかかる橋。
見りばなちかし住みなりし元ぬ城ん情きねん無情ぬ嵐にふちちりてぃ
みりばなちかしすみなりし むとぅぬぐしくんなさきねん むじょーぬあらしにふちちりてぃ
miriba nachikashi suminarishi mutu nu gushikuN nasaki neeN mujo nu 'arashi ni huchi chiriti
〇見ると悲しや 馴染んだ昔の御城は情けもない無情の嵐に吹き荒れて
語句・なちかし 悲しいことに。「懐かしい」ではない。
思みば腹立ちやしまらん 敵とぅまくらや一ちしてぃ エイ 死なば極楽さんとぅ思てぃ 思いちわみてぃあゆみ行く
うみばはらたちやしまらん てぃちとぅまくらやてぃーちしてぃ えい しなばぐくらくさんとぅむてぃうむいちわみてぃあゆみいく
'umi ba haradachi yashimaraN tichi tu makura ya tiichi shiti yei shinaba gukuraku saN tumuti 'umui chiwamiti 'ayumi 'iku
〇思えば腹立ちがやすまらない 敵と枕を一つにしてでも 死ねば極楽だと思って 思い極めて歩んでいく
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