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でぃらぶでぃ節

でぃらぶでぃ節 でぃらぶでぃ ぶし dirabudi bushi 語句・でぃらぶでぃ 人名。与那国民謡工工四には「デラ(人名)ブデ(叔父さん)」との注釈がある。「どぅなんむぬい辞典」には「はぶでぃ」は「先祖」の意味で、「ぶてぃ」は「父母の年上の従兄弟」とある。 一、いすんき んでぃらば でぃらぶでぃ あぶひてぃ はまてぃんき とぅんでぃみりば たいやばーたい いぐんや うでぃやまいぐん (「ひらがな」の発音は歌詞と同じなので省略。また声門破裂音の有無についても省略した。) isuNki Ndiraba dirabudi abuhiti hamatiNki tuNdimiriba tai ya baatai udyamaiguN ◯磯に出たらディラブディ アブヒティ浜に出てみたら 松明(たいまつ)は私の松明で 銛(もり)はウデャマ(人名)の銛だ 語句・いす 磯。・んき〜へ。〜に。方向を表す。・んでぃらば出てみたら。<んでぃるん。出てくる。・たい松明。たいまつ。・ばー私。私たち。・いぐん銛。もり。 二、いらぶた いゆぬ とぅんでぃらば みりばん んにに うてぃはらい みさだ いゆぬ みらるるば まんなが ひってぃとぅばい irabuta iyu nu tuNdiraba miribaN Nni ◯イラブタという魚が出て来たら 見たら胸に突きはらえ ミサダという魚が現れたら真ん中を突き飛ばせ 語句・イラブタ魚の名前。「イラブチャー」か。・いゆ魚。・んに胸。 三、いらぶたいゆん んなりるんどー みさだ にーばい かたかしん ないぬばどぅ うとぅだんた あばてぃんなよ ぶーるひてぃとぅばい ◯イラブタという魚も見えるぞ ミサダ、ミーバイ、カタカシも今こそ兄弟たちよ 慌てるなよ 全て突き飛ばせ 語句・んなりるんどー見えるぞ。<んぬん。見る。の可能形。・みさだ にーばい かたかしそれぞれ魚の名前。「ミサダ」は「ギンユゴイ」。「にーばい」はミーバイ。「かたかし」はオジサン。・ない今。<ないぬてぃん。すぐに。・ばーこそ。・どぅこそ。・うとぅだ兄弟姉妹。・んた〜など。・あばてぃんな慌てるな。<あばてぃるん。慌てる。・ぶーる全部。「むる」に対応。 四、いゆぬかでぃかでぃ でぃがしゃんどー うぶたぬ はまてぃんき あんがいくーよー でぃーばんた ばぎり いぐがらや さんびゃくどぅくどぅ ◯魚の数々 漁はうまくいったぞ ウブタヌ浜に上がって来いよ さあ私たちは分けて何尾(ずつ)かというと360尾 語句・かでぃかでぃ数々。・でぃがしゃんどー上手くいったぞー。・でぃーさあ。・ばんた私たち。・いぐがらやいくつくらいか。 五、さんびゃぐ どぅくどぅぬ いゆばゆ んたいんとぅぬ うとっだんき ばぎるんでぃや するばんたまに ぬしみりば ひゃぐぬにんどぅ ◯360尾の魚を三人の兄弟で分けるならば算盤玉で計算すると(一人)120尾(ずつ)。 語句・んたいんとぅ三人。「みたいんとぅ」ともいう。・するばんたまにぬしみりばら算盤玉にのせてみると。つまり、計算したら、の意。 六、ひゃぐぬにんどぅぬ いゆばゆ  かたみてぃむどぅれゃ だーぬとぅでぃや かたはんてぃ たーてぃたーてぃ ちらやばらい でぃぎらし ◯120尾の魚を担いで家に戻ると家の妻は 語句・かたみてぃ担いで。・だーぬ家の。与那国語では「y」が「d」になる。・とぅでぃ妻。「とぅじ」(本島)に対応。・はん足。「かたはんてぃ」は「片足を」。・ちら顔。・ばらい笑い。・でぃぎらし うまくいって。<でぃぎるん。上手くいく。成績や作柄が良いこと。 与那国民謡の「でぃらぶでぃ節」は、沖縄民謡の中でもそれほどメジャーというわけではないが、与那国出身の唄者のみならず、与那国民謡のファンにも愛されている民謡の一つである。 与那国島は、言うまでもなく日本の最西端の島で、台湾との距離は100キロ程しか離れていない。八重山諸島の一つではあるが、その島の言葉は八重山語とは区別される。(図 参照) 音源を聴けばお分かりだと思うが、リズムは早調子で、前奏からは八重山民謡「くいぬぱな節」との類似を感じさせ、歌に入れば本島の「収納奉行節」や「三村踊り節」を想起させる。つまり音階は琉球音階で構成されている。 いつ頃作られたウタなのか、現在わかることは少ない。しかしメロディーの類似性から、新城島で「くいぬぱな節」が作られて後に屋嘉比朝寄によって「高袮久節」に反映されたのが18世紀とすれば、その頃あたりのものと推測できないこともない。少し乱暴な推測ではあるが。 与那国島の庶民達の海での労働を素朴な不定形詩で描かれている。また力強く、かつリズミカルな与那国語の表現に引き込まれていく。 この訳には「どぅなんむぬい辞典」(与那国町教育委員会)を活用させていただいた。

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